重症筋無力症とは
重症筋無力症は著しい易疲労性(疲れやすさ)と口内変動(病状が一日のなかで変わる)が症状の中核となる病気です。
厚生省の特定疾患(難病)に指定され、医療費は公費からの補助か受けられます。 重症筋無力症の患者さんは、若い成人では女性が、中年以降では男性が多くなっています。また、子どもでは、眼筋型というタイプが多くみられます。
わかりやすくておススメの本(楽天) → 小児の重症筋無力症
重症筋無力症の症状
病状や症状によって、いろいろなタイプに分類されています。自己免疫疾患の一つです。自己免疫疾患とは、自分のからだの組織を敵とみなす抗体ができ、抗体がその組織を攻撃して破壊してしまう疾患群をさします。
重症筋無力症の場合は、神経筋接合部(運動終板=運動神経と筋肉のつなぎ目)に存在するアセチルコリン受容体(レセプター=物質を取り入れる細胞の取り入れ口)に対する抗体ができ、受容体が破壊されます。
すると、神経の命令を細胞に伝える伝達物質であるアセチルコリンが、筋肉細胞の中に入れなくなります。そのために神経の命令が筋肉に伝わらず、筋肉を動かしづらくなって、疲れやすくなるのです。
重症筋無力症の症状
重症筋無力症の症状としては、物がニ重に見えたり、まぶたが下がって(眼瞼下垂)、眠そうな顔つきになります。
からだを動かすことはもちろん、物をかむだけでも疲れるという著しい疲れやすさ(易疲労性)が特徴です。また、この症状は朝は軽く、夕方になるとひどくなります(口内変動)。 ときに、生命に危険がおよぶほどに急激に悪化する、クリーゼという状態になることもあります。
わかりやすくておススメの本(楽天) → 小児の重症筋無力症
重症筋無力症の検査と診断
重症筋無力症の検査では、採血をして、血液中に含まれるアセチルコリン受容体に対する抗体の値を測定します。
なかには異常値を示さないケースもあります。末梢運動神経を連続的に刺激する筋電図検査も有効です。不要になったアセチルコリンは、(アセチル)コリンエステラーゼという酵素によって分解されていますが、分解されなければ、筋肉への伝達作用は増長されると考えられます。
そこで、この酵素のはたらきを一時的に抑えてようすをみるテンシロンテストを行ないます。 この検査では、酵素のはたらきを抑える、作用時間の短い、抗コリンエステラーゼ剤(テンシロン)を静脈に注射します。
重症筋無力症の場合、症状が劇的に改善します。 重症筋無力症の症状が急激に悪化するクリーゼの原因としては、筋無力症自体の悪化や、抗コリンエステラーゼ剤の使いすぎが考えられます。
この場合も、テンシロンテストを行なえば、どちらか判定できます。 重症筋無力症は、胸腺腫瘍をともなうことも多いので、CTなどで胸を撮影し、その有無を調べます。
重症筋無力症の治療
神経末端から放出されるアセチルコリンを神経筋接合部で分解してしまうコリンエステラーゼの作用を抑え、アセチルコリンのはたらきを増強させるのが重症筋無力症の治療の基本です。
そのため、抗コリンエステラーゼ剤を服用しますが、テンシロンよりも作用時間の長い薬を使用します。 複視や眼瞼下垂以外の症状が出現するようであれば、胸腺を摘出する手術が考慮されます。
手術後、一時的に症状が悪化することがありますが、長期的には手術の有効性が明らかになっています。
異常な免疫を抑えるために副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤のアセチルコリンも使用します。
血液中のアセチルコリン受容体に対する抗体を取り除く血漿交換療法(いったん血液を体外へ導き出し、目的とする物質を取り除いてから、また体内へもどす治療)も有効です。
わかりやすくておススメの本(楽天) → 小児の重症筋無力症