失語症の症状
大多数の人は、大脳の言語中枢が左脳の前頭葉から側頭葉にかけて存在します。
言語中枢のなかで、出血や梗塞などの脳血管疾患、外傷や腫瘍によって、前頭葉のブローカ領野が障害されると、発話量の減少、文法の誤り、復唱の障害など、おもにことばの表出面に強い障害がおこります(運動失語症)。
一方、側頭葉のウェルニッケ領野が障害されると、発話量は増えますが意味不明だったり、一貫しない音の誤りが多発し、ことばの音や意味に関する理解面の障害が強くおこります(感覚失語症)。
これら二つの代表的な失語症状のほかに、両者が合併する重度の失語症(全失語)から、言おうとすることばが思うようにでてこない(健忘失語症)軽いものまで、ことばの表現と理解に関するいろいろな症状が現われます。
失語症は痴呆や意識障害と異なり、自分をとりまく状況や対人関係についての認識はほぼ正常にはたらくのに、ことばによる意志の疎通が著しく障害された状況に対する、本人の心理的な苦痛をよく理解してあげることが必要です。
失語症の検査と診断
失語症は脳神経外科、神経内科で原因疾患の診断と治療方針の決定を行ないます。病巣の位置の診断が重要で、高性能のCTやMRIなど画像診断の設備が整った医療機関での検査が必要となります。
また失語症状の詳しい把握のため、言語聴覚士による失語症検査が行なわれます。
失語症の治療
脳血管障害に代表される成人の中枢神経障害では、発症後数か月間は症状の改善が期待できる期間です。
失語症の発症から約半年を過ぎると、神経障害は固定する傾向にあります。 失語症の治療には、原因となる病気の治療と並行して言語機能の改善をめざす早期リハビリテーションと、症状固定期を過ぎてからのコミュニケーション能力の総合的な向上・維持、退院後の生活への適応を目的とする長期的なリハビリテーションがあります。
発症後なるべく早く理学療法、作業療法などとともに言語療法を開始することが望ましく、近年では脳神経外科を標榜する医療機関に言語聴堂上が所属することが多くなってきています。