器質的構音障害の症状
口蓋裂では、口腔と鼻腔の境界が部分的に失われ、くちびるからでるべき語音が鼻のほうに響いてしまいます。
その結果、母音の響きがゆがむ、子音の破裂、摩擦雑音が弱まるなどの症状が器質的構音障害ではでます。
舌がんの切除後は舌を中心に口腔底や咽頭に大きな組織欠損ができます。術後の言語症状は舌の変形や運動機能の程度で異なりますが、軽い語音のゆがみから、音声による意志疎通がほとんどできない重症な構音障害まであります。
器質的構音障害の治療
器質的構音障害の治療には、手術や装具による治療、言語聴覚士による言語訓練があります。
・手術
形態の異常を可能なかぎり修復するのが基本で、口蓋裂に対する口蓋形成術、がんの切除後の組織欠損に対する皮弁再建術などがあります。
・装具による治療
口蓋裂などで声が鼻にぬける器質的構音障害の症状に対して、スピーチェイドや軟口蓋掌上装置が補助的に使用されることがあります。
また、口蓋の大きな組織欠損で再建不能な場合は、装具(床)による閉鎖が行なわれます。
機能的構音障害の検査
ほかの原因による構音障害を見落とさないために、発語器官の形態と運動、聴力、言語発達などの検査を行なって診断します。
症状の詳しい把開には、言語聴覚士による構音検査が必要です。正常の発達過程を逸脱した発音で、放置すると年長までもち越して固定すると判断されると、言語聴覚士による訓練が行なわれます。
運動障害性構音障害の原因
脳血管疾患や脳の外傷、腫瘍などによる発語の「運動」を担当する中枢の言語障害、パーキンソン病、重症筋無力症など、神経―筋系の病気が運動障害性構音障害で発話器官に病変がおよんだ場合などでおこります。
発語器官の力が弱まる、あるいは運動のコントロールが失われるため、ことばの音がゆがんだり、話の速度が異常に遅くなったり、不自然な抑揚の話し方になったりします。
運動障害性構音障害の検査と診断
運動障害性構音障害は、神経内科、耳鼻咽喉科などで検査します。 脳の病変の診断と治療方針の決定のためには、CTなどの画像診断を含めた脳外科の診察が必要になります。
言語の症状の検査は言語聴覚士の担当となります。たとえば重症筋無力症は、進行すると呼吸障害などの危険な状態になることもありますが、初期には、疲れたときだけにことばが鼻にぬけるという症状が現われるため、詳しい言語症状の把握と医学的な精密検査で診断されることも多いのです。
原因不明の発音の障害は、複数の専門家による多角的な診断が必要となるため、言語療法部門のある総合病院で検査を受けてください。