急性肝炎とは
人体の化学工場、異物処理装置といわれる肝臓の細胞が、広い範囲にわたって破壊される病気を肝炎といい、肝炎のうちふつうは1〜2か月で治ってしまうものを急性肝炎といいます。
わかりやすくて参考になるおススメの本（楽天） → 劇症肝炎の治療
急性肝炎の症状
急性肝炎では肝細胞が広範に壊れるため、ＧＯＴ、ＧＰＴなどの肝機能検査の値が急激に上昇しますが、それだけではほとんど自覚症状がなく、多くは、黄疸がでて初めて急性肝炎に気づきます。
黄疸は、血液中の色素であるビリルビンを胆汁へ排泄する機能が障害されて、血液中のビリルビンの濃度が上がるために、皮膚や白目の部分が黄色く見える症状です。
血液中のビリルビン値が上昇すると、尿中にビリルビンが排泄されるために尿が褐色になります（褐色尿）。また便として排泄される胆汁中のビリルビンが少なくなって、大便の色が薄くなったり、白色になったりします。
黄色人種である日本人では、皮膚の色が黄色くなってもすぐに気づかないことがありますが、白目の部分が黄濁することで黄疸とわかります。
それまでは、発熱などの症状から、かぜをひいたと思っている人が多いのですが、黄疸とともにだるさ、気力がなくなるなどの全身倦怠感、疲れやすい、食欲不振などの全身症状が現われます。
また、味やにおいの好みが変わったり、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛なども出現します。 急性肝炎は適切な治療でほとんどは1〜2か月で泊りますが、場合によっては重症化したり、急激に大量の肝細胞が破壊される劇症肝炎になって生命が脅かされることもあるので入院治療が必要です。
また、軽い場合は黄疸がでないこともあり、血液検査をしないでいると、かぜや急性胃腸炎と診断されてしまうことがあるため、急性肝炎の診断は内科医のなかでも肝臓専門医の診察がたいせつです。
急性肝炎の原因
急性肝炎の原因のほとんどはウイルス（とくに肝炎ウイルス）の感染によるものです。ウイルス肝炎は、肝炎ウイルスの感染がないとおこりません。
体質的に肝炎になりやすいとか、過労が原因でおこるといったことはなく、症状がでる前になんらかの肝炎ウイルスが感染する機会があったことを意味します。
急性肝炎の原因として肝炎ウイルス以外にも、ＥＢウイルスやヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなどの感染でも、肝炎が生じることがありますが、これらの多くは、からだの免疫力が低下した状態のときに感染するものです。
また、肝炎ウイルスは肝細胞の中で増殖しますが、ＥＢウイルスなどのその他のウイルスは肝臓以外で増殖します。その場合、肝臓の破壊はウイルス感染症の一部分の症状にすぎません。
急性肝炎のいろいろ
肝炎の原因ウイルスには、Ａ型、Ｂ型、Ｃ型、Ｄ型、Ｅ型、Ｇ型があり、どれも急性肝炎をおこします。
わかりやすくて参考になるおススメの本（楽天） → 劇症肝炎の治療
急性肝炎の検査
急性肝炎の場合、血液検査を行なうと、肝細胞の破壊の程度を示すＧＯＴ、ＧＰＴが数百〜数千単位に上昇しています。
また、一般にｌｇＭという血液中の免疫グロブリン濃度が上昇し、肉眼ではわからなくても、黄疸を示すビリルビン値が上昇していることがあります。
どのタイプの肝炎であるかを確認するために、各型のウイルス感染の証拠を測定します。 Ａ型急性肝炎では、血液中にｌｇＭ型のＨＡ抗体の存在が検出されます。 Ｂ型急性肝炎では、ＨＢｓ抗原が証明され、ｌｇＧ型のＨＢｃ抗体が低値で、ｌｇＭ型のＨＢｃ抗体が高値になることで診断がつきます。
Ｃ型急性肝炎の場合は、肝炎発症前の血液との比較が必要です。血液中のＨＣＶ抗体や、ＨＣＶ‐ＲＮＡが陽性となります。
Ｄ型肝炎は、血液中のデルタ抗体の出現、Ｅ型肝炎はＥ型抗体の検出、Ｇ型肝炎は血液中のＨＧＶ‐ＲＮＡの検出とその後のＨＧＶ抗体の検出で診断がつきます。
急性肝炎の治療
急性肝炎はふつう1〜2か月で治りますが、約1％が劇症肝炎となります。とくに発症初期に安静を怠ったり発病期に過労が重なると危険で、回復が長びくことがあります。
したがって、急性肝炎の治療は入院したうえで、安静第 一を心がけることがたいせつです。食欲が落ちたり、吐き気が強い時期には食事がとれず、栄養不足となるため、点滴などで栄養を補給することも必要になります。
食欲がでたら、たんぱく質をできるだけ多くとるようなメニューとなります。ただし、あまり長く続けると運動不足と栄誉過多で脂肪肝の原因になるので注意しましょう。
急性肝炎の治療には、通常肝庇護剤が点滴に加えられたり、内服で使用されます。これらは肝細胞の修復を助けるためとされています。
急性肝炎のなかでも、Ｃ型肝炎は慢性化することが多いため、できればウイルスの確実な駆除が目指されます。そのため、Ｃ型慢性肝炎の治療に使われるインターフェロンを3〜6か月間使用する方法もとられます。
ただし、まだＣ型急性肝炎にインタＪフェロンを使用することが医療保険の適応になっていません。そのため、使うか使わないかは医療機関によって差があります。
急性期に使用せず、慢性肝炎になった初期に使用すれば、ほとんどウイルスが駆逐できるからです。